Looker Studio活用で「見るだけレポート」を卒業。ビジネスを動かすデータ分析術

「毎日レポートは見ているのに、次の一手が見えてこない…」
「データは山ほどある。でも、結局どこから手をつければいいのか分からない…」
レポート作成に時間をとられ、肝心の分析や考察にまで手が回らない…」

もし、あなたがこのような壁に突き当たっているのなら、その気持ち、私には痛いほどよく分かります。こんにちは、株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。私は20年以上、ウェブ解析という領域で、EC、メディア、BtoBなど、本当に様々な業界の「Webサイトの課題」と向き合ってきました。

多くの現場で目にしてきたのは、素晴らしいツールを導入しながらも、そのポテンシャルを十分に引き出せず、「データを眺めるだけ」で終わってしまっているという、非常にもったいない現実でした。

この記事は、単なるツールの使い方を解説するものではありません。Googleが提供する無料のBIツール「Looker Studio」を武器に、あなたが抱えるデータ分析 課題を乗り越え、単なる「報告」を、ビジネスを動かす「洞察」へと昇華させるための、私の経験に基づいた実践的な思考法と技術をお伝えするものです。

さあ、データという名の羅針盤を正しく読み解き、あなたのビジネスを次のステージへと進める旅を始めましょう。

ハワイの風景

なぜ、あなたのデータ分析は「作業」で終わってしまうのか?

Looker Studioという名前を、最近よく耳にするようになったかもしれません。これは、Google Analyticsや広告データ、スプレッドシート、あるいは基幹システムのデータベースまで、社内に散らばる様々なデータを一つに繋ぎ合わせ、視覚的に分かりやすいレポートやダッシュボードを自動で作成できる、非常に強力なツールです。

しかし、ここで一つ、立ち止まって考えてみてほしいのです。なぜ、私たちはこうしたツールを求めるのでしょうか?それは、データに基づいた「より良い意思決定」をしたいからのはずです。にもかかわらず、多くの現場では、レポートを作ること自体が目的化してしまいがちです。

それはなぜか。私は、その根本原因を「データとの向き合い方」にあると考えています。私たちは創業以来15年間、「データは、人の内心が可視化されたものである」という信条を掲げてきました。アクセス数やコンバージョン率といった数字の羅列は、いわばユーザーの「声なき声」です。その声に耳を傾け、裏側にある感情や行動のストーリーを読み解こうとしない限り、データはただの無機質な数字のまま。ビジネスを動かす力にはなり得ません。

Looker Studioは、その「声」を聞き取りやすくしてくれる、いわば高性能な集音マイクのようなものです。しかし、マイクをただ置いただけでは意味がありません。「誰の」「どんな声を聞きたいのか」という目的意識を持って初めて、その真価を発揮するのです。

「見るだけ」で終わらない。Looker Studioがビジネスを動かした実例

言葉だけでは、なかなかイメージが湧かないかもしれません。私がこれまでに経験した、Looker Studio活用が単なる数値報告に終わらず、具体的なビジネス改善に繋がった例をいくつかご紹介します。

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あるBtoBのクライアントは、Webサイトからの問い合わせ数をKPIとしていましたが、なかなか目標に届かずにいました。営業部門からは「サイトからのリードは質が低い」という声も上がっており、マーケティング部門との間に溝が生まれつつありました。

そこで私たちは、Google Analyticsのデータに加え、営業部門が管理する顧客管理システム(CRM)のデータをLooker Studioで統合しました。そして、「問い合わせ内容」や「その後の受注率」といったデータと、ユーザーがサイト内で「どのページを」「どの順番で」見たかという行動データを掛け合わせたのです。

すると、驚くほど明確な傾向が見えてきました。特定の導入事例ページをじっくり読んだ後に、料金ページへ遷移して問い合わせたユーザーは、他のルートからのユーザーに比べて受注率が3倍以上も高かったのです。これは、データが可視化した「優良顧客の黄金ルート」でした。

この「事実」は、マーケティング部門と営業部門の共通言語となりました。「サイトのリードの質が低い」のではなく、「質の高いリードが生まれるルートを我々が知らなかっただけだ」と。その後、この黄金ルートへユーザーを誘導するためのサイト改修や広告配信を行った結果、Web経由の受注数は半年で1.8倍に増加しました。これは、数値を改善したのではなく、データによって組織の「目線」を合わせ、ビジネスそのものを改善した典型的な成功例です。

Looker Studio活用の羅針盤:失敗しないための3つのステップ

では、どうすればLooker Studioを「ビジネスを動かす武器」として使いこなせるのでしょうか。高機能なツールを前にすると、つい色々なことを試したくなりますが、焦りは禁物です。私が20年の経験で確信している、失敗しないためのステップは非常にシンプルです。

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ステップ1:まず「問い」を立てる。データ接続はそのあとで。

最もよくある失敗は、いきなりツールを触り始めてしまうことです。料理に例えるなら、レシピを決めずに冷蔵庫にある食材を片っ端から炒め始めるようなもの。それでは美味しい料理は作れません。

最初にやるべきは、データソースを接続することではなく、「私たちは、何を知ることで、次の一歩を踏み出せるのか?」というビジネス上の「問い」を立てることです。例えば、

  • 「新規顧客とリピート顧客では、どちらが利益に貢献しているのか?」
  • 「どの広告キャンペーンが、最もLTV(顧客生涯価値)の高い顧客を連れてきているのか?」
  • 「サイトのどのコンテンツが、ユーザーの不安を解消し、購入の後押しをしているのか?」

このような具体的な問いがあって初めて、どのデータソース(Google Analytics、広告、CRMなど)を接続する必要があるのか、どんな分析をすべきかが見えてきます。接続するデータソースの選定は、この「問い」に答えるための材料集めなのです。

ステップ2:「誰に、何を伝えたいか?」から逆算するレポート設計

問いが決まったら、いよいよレポート設計です。ここでの鉄則は「誰が、そのレポートを見て、どう動いてほしいか」を徹底的に考えることです。

経営者が見るレポートであれば、事業全体の健康状態がひと目でわかるサマリーが必要です。現場の担当者が見るのであれば、日々の改善アクションに繋がる詳細なデータが求められるでしょう。

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かつて私は、自分の分析スキルを示すかのように、非常に高度で複雑なレポートを作ってしまったことがあります。しかし、クライアントの担当者はそのレポートの価値を上司に説明できず、結局ほとんど活用されませんでした。画期的な分析も、受け手に伝わり、行動に繋がらなければ自己満足で終わってしまいます。

レポートは、シンプルであればあるほど強力です。あれもこれもと欲張らず、「この問いに答える」という一点に絞り込み、誰が見ても迷わないデザインを心がけてください。時には、派手なグラフよりも、一つの大きな数字をどんと見せる方が、人の心を動かすこともあります。

ステップ3:「仮説」を持ってABテストを行い、改善を止めない

レポートが完成したら、ようやくスタートラインです。データを見て「ふむふむ、なるほど」で終わらせては、何も変わりません。データから得た洞察をもとに、「こうすれば、もっと良くなるのではないか?」という仮説を立て、具体的なアクションに移しましょう。

その際、強力な味方となるのがABテストです。「このボタンの色を変えたらクリック率が上がるかも」といった小さな改善も大切ですが、私が推奨するのは「固定観念を壊す、大胆なテスト」です。例えば、「情報を詰め込んだリッチなデザイン」と「要点だけを絞ったシンプルなテキスト中心のデザイン」、どちらが本当にユーザーに響くのか。結果が明確に出るような、大胆な差で検証することで、進むべき方向性が一気にクリアになります。

Looker Studioは、こうした施策の結果をリアルタイムで観測し、次の仮説を生み出すための「学びのサイクル」を高速で回すためのエンジンなのです。

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私が乗り越えてきた「3つの壁」。Looker Studio導入で陥りがちな罠

ここまで理想的なステップをお話ししましたが、もちろん、現実の道のりは平坦ではありません。私自身も、過去には手痛い失敗を繰り返してきました。あなたが同じ轍を踏まないよう、特に注意すべき3つの「罠」について、私の経験を交えてお話しします。

  1. 「完璧なデータ」を待つ罠:
    データの品質は確かに重要です。しかし、「データが完全に綺麗になるまで分析は始められない」と考えてしまうと、永遠にその日は来ません。多少のノイズが含まれていることを理解した上で、まずは大きな傾向を掴むことが重要です。走りながら考え、徐々にデータの精度を高めていく。そのバランス感覚が求められます。
  2. 「正論」を振りかざす罠:
    データは時に、組織の「不都合な真実」を明らかにします。かつての私は、その「正論」を武器に、クライアントの組織体制や予算を無視した理想論を提案し、まったく受け入れてもらえなかった苦い経験があります。アナリストの仕事は、正しい答えを見つけることだけではありません。相手の現実を深く理解し、実現可能な一歩を示すことこそが、真の価値だと今は信じています。
  3. 「沈黙」を恐れる罠:
    「データがまだ足りない」「外的要因(TVCMなど)の影響が大きく、正確な判断ができない」。分析をしていると、そんな場面に必ず出くわします。クライアントからの期待やプレッシャーに負け、不確かなデータで何かを語ってしまうのは、アナリストとして最もやってはいけないことです。データに誠実であるためには、時には「今はまだ分かりません」と正直に伝え、「待つ勇気」を持つことが不可欠です。その姿勢こそが、最終的に深い信頼を勝ち取ると私は学びました。

私たちは「レポート」を納品しません。私たちが提供するのは「次の一手」です。

ここまでお読みいただき、Looker Studioの活用が、単なるツール操作の習熟ではなく、ビジネス課題と向き合う「思考のフレームワーク」そのものであることを感じていただけたのではないでしょうか。

私たちサードパーティートラストは、Looker Studioの導入支援やレポート作成代行を行っていますが、私たちの仕事は「綺麗なレポートを納品すること」ではありません。私たちの真の価値は、お客様のビジネスの深い理解に基づき、データという声なき声から「次に何をすべきか」という具体的なアクションプランを共に描き出すことにあります。

時には、Webサイトの改善にとどまらず、商品構成や組織体制にまで踏み込んだ提案をすることもあります。なぜなら、私たちの目的はレポートの数値を改善することではなく、お客様のビジネスそのものを改善することだからです。

もし、あなたが「データ活用の、何から手をつければいいか分からない」「レポートは見てるけど、次のアクションに繋がらない」「データを通じて、組織の壁を越えたい」と感じているなら、ぜひ一度、私たちにお話を聞かせてください。

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明日からできる、最初の一歩

さて、長い旅にお付き合いいただき、ありがとうございました。最後に、この記事を閉じた後、あなたが明日からできる「最初の一歩」を提案させてください。

それは、「あなたのビジネスにとって、たった一つだけ、最も重要な指標(KPI)は何か?」を改めて定義してみることです。売上でしょうか? 問い合わせ数でしょうか? それとも、リピート率でしょうか?

まずはその一つの指標を、Looker Studioを使って、誰が見ても一瞬で理解できる形で可視化してみてください。それが、データでビジネスを動かす、記念すべき第一歩となります。

その一歩を踏み出す中で、もし道に迷ったり、より高い山を目指したくなったりした時は、いつでも私たちプロの道案内人を頼ってください。あなたのビジネスがデータと共に力強く成長していく、そのお手伝いができることを、心から楽しみにしています。

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